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第1回 木の雑学

同じ樹種なのになぜ色が違うのか。節がないと高いのはなぜ?
木材、とくに無垢に対するエンドユーザーの関心は高まっているものの、1本1本違いがあることや、反る、変形するといった木材の性質をきちんと理解してもらえないことから発生するクレームも少なくないようです。
 知っているようで、意外と知らない木材のこと。正しい「うんちく」は、エンドユーザーの心をつかむ強みになるかもしれません。そこで、「今さら人には聞けない」木材の知識をまとめてみました。
素適住生活研究所

年輪

丸太樹木の年齢は、年輪を数えれば分かります。日本では、一般的に1年に1本ずつ環状の模様がつくられるので、根元の年輪の数から、木の年齢を知ることができるのです。ところが、年輪がない木もあります。木は、細胞を分裂させて生長していきますが、その生長の度合いは気候などの環境条件で異なります。日本の針葉樹では、春から夏につくられる細胞は壁が薄く形が大きいので、この部分は淡い色になります(これを、「早材」と言います)。一方、生長が弱まる時期(主に夏から秋)につくられる細胞は、壁が厚く形が平らなので、濃い色に見えます(これを「晩材」と言います)。
日本では気候が周期的に変化し、淡い部分と濃い部分が毎年繰り返しつくられるので、1年に1本ずつ「輪」ができたように見えます。「年輪」というのは、「輪」が1年に1つできる場合に限定した呼び方で、正しくは「生長輪(せいちょうりん)」と呼びます。

木材の細胞したがって、熱帯地方のように1年を通して気候が変わらない地方では、つくられる細胞に変化がないので、一般的には「輪」ができません(ただし、雨季と乾季がある場合は、年輪に似たうすい「輪」ができることもあるようです)。また、異常気象などで、1年に2個以上の「輪」ができることもあります。年輪のない木や、ニセモノの「輪」(偽年輪(ぎねんりん))ができる木もあるのです。

木の幹のつくられ方

木の幹の作られ方木の外側、樹皮のすぐ裏には、「形成層(けいせいそう)」と呼ばれる層があります。この形成層は、自分の内側(木部)と、外側の樹皮とに細胞を分裂しながら、自分自身は外側へ動いていきます。古い部分は内側に追いやられていくのです。このときに細胞は死んでしまい、その過程で木部がつくられるのです(これを「木質化と言います)。
したがって、木部で一番新しいのは「外側」の部分ということになります。
赤身と白太実は樹木のうち、生きているのはこの形成層と、養分を蓄えている部分だけで、大部分は生まれてすぐに死んでしまうのです。養分を蓄えている部分の細胞は生きていますが、これも数年から数十年すると死んでしまいます。柔細胞が死ぬとき、蓄えてあったデンプンなどの成分をフェノールなどの別の成分に変化させます。このとき、白っぽい部分が、濃い色に変わります(これを「心材化」と言います)。中心に近い濃い色の部分が「心材」(または「赤身(あかみ)」)、周辺部の白っぽい部分が「辺材」(または「白太(しらた)」)です。変化したときにつくられる化学成分は、防腐や防菌剤と同じような働きをします。「心材」の方が「辺材」よりも腐りにくいのは、このときにつくられる化学成分のためなのです。

木取り

木取りAのように、木の中心軸(丸太の中心)から放射線状に切ったものを「柾目(まさめ)」、Bのようにそれとは垂直の方向に切ったものを「板目」と言います。

柾目板「柾目板」は、1本の木からあまり取れないため、価格は高くなりますが、木目が平行で、美しい縦じま模様になります。膨張や収縮が少ないので、寸法変化を嫌う建具や造作材などに使われます。ご飯を入れるお櫃(ひつ)や寿し桶などは、柔らかい早材部分が水分を通すので、「柾目」が使われます。

板目板一方、「板目板」は、タケノコのような木目になります。幅の広い板も取れ、歩留まりも良いのですが、乾燥すると反りやすい性質があります。堅い晩材の部分が水を透過させにくくするため、一般に酒樽のように長期間水分を蓄えておく容器などに、「板目」が使われてきました。

木材の乾燥と反り板という字は、「木が反る」と書きます。「板目」は文字どおり反りやすい性質があります。木の中心部に比べて、年輪の外側の方が円周が大きいので、それだけたくさん縮みます。このため、板目板は年輪の外側に反りやすいのです。

育林

産地によるスギ材の違いこの写真はすべてスギです。同じスギでも、木目がつまっているものと、そうでないものといろいろあるのが分かります。同じ樹種なのに、こんなに違いがあるのはなぜでしょうか。

植林これには、気候や土壌のほかに、育て方も影響します。例えば、吉野スギは、木と木の間隔を狭く植えます。こうすると、木同士の競争が激しいのであまり太れず、通直で目のつんだ材ができます。吉野では、早い時期からしばしば間伐を行い、良い材を残すようにして、優良大径材や樽用の丸太をつくる林業が行われてきました。

植林一方、宮崎の飫肥(おび)スギは、疎に植えます。暖かく多雨な気候も手伝って、木は比較的横に大きく成長します。すると、目幅の広い材ができます。腐りにくく曲げやすいので、造船用の材として利用されてきました。 育ちが違えば、木の見た目や性格も変わってきます。木目から読み取れるストーリーをお施主様に紹介してみてはいかがでしょうか。